育った家と選ぶ家 〜購入希望に現れる“実家の影響”〜
お客様から不動産購入の相談を受けた時に、よくこんなことを感じることがあります。
「戸建て育ちの方は戸建てを希望するケースが多いな…」
「マンションや団地で育った方は、自然とマンション志向だな…」
日々の接客の中で、ふとした瞬間に気づくこの“傾向”。
今回は、不動産仲介の現場で感じる「育った住まいが住宅購入に与える影響」について書いてみたいと思います。
育った家は“住宅観”のベースになる
人は意識していなくても、子どもの頃に過ごした環境がそのまま「暮らしの当たり前」になっているものです。
たとえば――
- 戸建てで育った方は、庭で遊んだり、玄関の外に洗車できるスペースがあったりと、“土地がある暮らし”に親しんでいます。
- マンションや団地で育った方は、管理の行き届いた共用部や、ワンフロアで完結する生活動線の便利さが自然と染みついていることが多いです。
「それが普通だったから」。
それだけのことですが、住宅選びの場面では、この“感覚のベース”が大きく影響することがよくあります。
接客経験から見える購入動機のパターン
実際にお客様とお話していても、その人がどんな家で育ったのかが、購入希望の言葉に表れることが少なくありません。
たとえば——
- 戸建て育ちの方:「やっぱり子どもをのびのび育てたい」「音の問題が気になるから集合住宅はちょっと…」
- マンション育ちの方:「戸締りの手間が少ないから安心」「管理が任せられるのがいい」「駅近で育ったので、通勤・通学の利便性を重視したい」
それぞれ、非常に納得できるご希望ばかりですが、その“出発点”をたどると「実家」の存在があることが多いのです。
育った環境の違いが夫婦間の価値観にも現れる
住宅選びでは、特に「夫婦で育った環境が違う」場合に、お互いの価値観に差が出ることもよくあります。
たとえば——
- 奥様がマンション育ちで「駅近がいい・ワンフロアで楽」と希望している
- 一方でご主人が戸建て育ちで「庭がほしい・隣と壁を共有したくない」と希望している
どちらの考えも間違いではありません。ただ、生活の「前提条件」が違うために、お互いの“理想の家”にすれ違いが生まれてしまうのです。
だからこそ、物件探しの前に
「どんな家で育って、どんなところが好きだったか/不便に感じたか」
を話し合ってみることを強くおすすめします。
育った家はルーツ。でも、未来の家は選べる。
人は「慣れた暮らし」に安心感を覚えるものです。
しかし、住宅購入はこれからのライフスタイルに合わせて選ぶ、人生の大きな決断でもあります。
育った家を振り返りながら、
「これからどんな暮らしがしたいか」
「家族にとってどんな住まいが合うか」
を改めて考えてみてください。
私たち仲介業者としても、そうした“気持ちの整理”を一緒に行いながら、お客様それぞれにとって最適な住まい探しをサポートしていきたいと思っています。
まとめ
- 育った家は、住宅選びの価値観に大きな影響を与える
- 夫婦で価値観が異なる場合は、出発点の違いを理解し、丁寧にすり合わせを
- “慣れ”にとらわれず、「これからの暮らし」に目を向けることが大切
実家はあなたのルーツ。でも、これから選ぶ家は、あなたとご家族の未来そのものです。