【癖あり物件シリーズ②】再建築不可物件が売りづらい本当の理由

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カテゴリー: 不動産売却に関するご相談と重要ポイント  タグ:  | | | | | | | |

「相続した実家が『再建築不可』と言われました」

「古い家だけど、建て替えできないってどういうこと?」

「大手不動産会社に『この物件は難しいですね』と言われて…」

こんなお悩みを抱えて、私のところにご相談にいらっしゃる方が少なくありません。

再建築不可物件。

建蔽率・容積率オーバー以上に、売却が難しいと言われる物件です。

「再建築不可だから売れない」と諦めていませんか?

確かに、再建築不可物件は非常に売りづらいのが現実です。でも、売りづらい理由をきちんと理解すれば、対応策が見えてきます。

今回は、なぜ再建築不可物件が売りづらいのか、その本当の理由を詳しく解説していきます。


再建築不可物件とは?

まず、基本的なところから確認しましょう。

再建築不可物件とは、今ある建物を取り壊したら、同じ場所に新しい建物が建てられない土地のことです。

「建築基準法上の道路」に適切に接していないため、建築確認が下りません。

なぜ再建築不可になるのか?

再建築不可になってしまう理由は、主に以下のようなケースです。

1. 接道義務を満たしていない

建築基準法では、建物を建てるために以下の条件があります。

「幅4m以上の建築基準法上の道路に、2m以上接していること」

これを「接道義務」と言います。

再建築不可物件の多くは、この接道義務を満たしていません。

  • 私道や通路にしか面していない
  • 道路に接している部分が2m未満
  • そもそも道路に接していない(袋地)
  • 建築基準法上の道路として認められていない道に面している

2. 法改正による既存不適格

  • 建築当時は適法だった
  • 昭和25年の建築基準法施行前に建てられた建物
  • その後の法改正で基準を満たさなくなった

古くからある住宅地に多いパターンです。

「昔から住んでいるのに、なぜ今さら建て替えできないの?」

こう思われる方も多いのですが、法律が変わったことで、結果的に再建築不可になってしまったのです。

3. 位置指定道路の問題

  • 位置指定道路が廃止された
  • 私道の所有者が建築に同意しない
  • 私道の持分がない

位置指定道路とは、特定行政庁が「建築基準法上の道路」として認めた私道のことです。

この道路に何らかの問題があると、再建築不可になります。

再建築不可でも、リフォームは可能

誤解されがちですが、再建築不可物件でもリフォームや修繕は可能です。

ただし、「建て替え」は不可。

また、建築確認が必要な規模の大規模リフォームや増築には制限があります。

そして最も怖いのは、建物が倒壊したり、取り壊したりしたら、そのまま更地になってしまうということです。

新しい建物は建てられません。

あなたの物件が再建築不可かどうか、まず役所の建築指導課で確認することが大切です。


なぜ大手不動産会社は扱いたがらないのか?

「大手不動産会社に相談したら、『うちでは難しいです』と言われました」

再建築不可物件の相談では、こうしたケースが非常に多いです。

なぜ大手は扱いたがらないのでしょうか。

理由1:説明が複雑で時間がかかる

「再建築不可」という概念を、買主に理解してもらうのは簡単ではありません。

接道義務、建築基準法、位置指定道路…専門用語が並びます。

「リフォームはできるけど建て替えはできない」

「将来、建物が壊れたら更地のまま」

こうした説明をしても、一般の買主はピンと来ないことが多いのです。

説明不足でトラブルになるリスクを考えると、大手は二の足を踏みます。

理由2:一般的な買主には売れない

マイホームを探している家族にとって、再建築不可物件は基本的に不向きです。

「いつか建て替えたい」

「子供が大きくなったら増築したい」

こうした一般的な需要には、まったく応えられません。

成約率が低い=効率が悪い物件は、大手の営業スタイルに合わないのです。

理由3:住宅ローンがさらに厳しい

建蔽率・容積率オーバー以上に、再建築不可物件は融資が厳しいです。

金融機関は「建物の再建築が可能か」を重視します。

再建築不可=将来的な担保価値が極めて低い

このように判断されるため、ほぼすべての金融機関で融資が下りません。

買主が現金購入者に限定される=市場が極端に狭い

大手としては、扱いにくい物件なのです。

理由4:会社のリスク管理

大手不動産会社は、ブランドイメージを非常に大切にしています。

説明不足で後から「聞いてない!」とクレームになったら?

契約不適合責任を問われたら?

会社のリスク管理の観点から、「面倒な案件は最初から断る」という方針になりがちです。

つまり、あなたの物件が悪いのではなく、対応できる会社が限られているのです。


再建築不可物件が売りづらい6つの理由

では、なぜ再建築不可物件は売りづらいのか。

その理由を、一つひとつ詳しく見ていきましょう。

理由1:住宅ローンがほぼ通らない

これが最も大きな理由です。

再建築不可物件は、ほとんどの金融機関で住宅ローンの融資が受けられません。

メガバンク、地方銀行、信用金庫、フラット35…すべて難しいです。

金融機関は物件を担保として融資を行いますが、再建築不可物件は将来的な担保価値が極めて低いと判断されます。

建物が老朽化しても建て替えられない。

災害で倒壊しても、新しく建てられない。

こんな物件に、金融機関はお金を貸せないのです。

ごく一部のノンバンクや特殊なローン商品もありますが、金利が非常に高く、審査も厳しいのが現実です。

結果として、買主は現金購入できる人に限定されます。

住宅ローンを使って家を買おうとしている一般的な買主—市場の大部分を占める層—は、完全に対象外です。

理由2:価格が大幅に下がる

住宅ローンが使えない=買主が極端に限られる=売主の立場が非常に弱くなる

この構図から、価格交渉で圧倒的に不利になります。

再建築不可物件は、相場よりも大幅に安くなるケースが多いです。

土地の評価も、「建て替えできない土地」として低く見積もられます。

建物は「ほぼ価値なし」と判断されることも珍しくありません。

想定していた価格の半額以下、場合によっては3分の1以下になることもあります。

「こんなに安くしか売れないのか…」

「固定資産税を払い続けるより、タダ同然で手放した方がマシなのか…」

売主としては、非常に厳しい現実に直面することになります。

理由3:買主が極端に限定される

住宅ローンが使えないとなると、買主は以下のような層に極端に限定されます。

現金購入できる投資家

  • 賃貸用として収益を重視
  • 利回り計算で判断する
  • 違法性や再建築の可否よりも、今の収益性を見る

ただし、投資家は物件を厳しく選びます。立地と利回りが合わなければ、見向きもされません。

買取業者

  • 買い取った後、リフォームして賃貸or転売
  • ノウハウがあるプロ

ただし、買取業者はさらに安い価格を提示してきます。

隣地所有者

  • 自分の土地と合筆して使いたい人
  • 駐車場や庭として利用したい人

ただし、そもそも隣地の人が興味を持つかどうかは運次第です。

DIY好き・古民家好き

  • リフォーム前提で安く購入したい層
  • 「建て替えなくていい、この古い家をリノベして住みたい」という人

ただし、市場では少数派です。

一般的なマイホーム需要には、まったく届きません。

「駅近で環境も良いのに、誰も見に来てくれない…」

こうした状況が続くと、売主は焦りと絶望感でいっぱいになります。

理由4:将来のリスクが大きい

買主の立場で考えると、再建築不可物件には大きなリスクがあります。

  • 建物が老朽化しても、建て替えできない
  • 大規模な修繕にも制限がある
  • 地震や災害で倒壊したら、更地のまま
  • 売却したくなっても、次の買主を見つけるのが困難
  • 「子供に残せない」という心理的ハードル

「今は住めるけど、10年後、20年後はどうなるの?」

買主がこの不安を乗り越えて、納得して購入してくれるかどうか。

非常に高いハードルです。

理由5:接道義務を満たす方法が限られている

「接道義務を満たせば、再建築可能になるのでは?」

理論的にはそうです。

ただし、現実的には非常に難しいケースが多いのです。

隣地を買い取って接道を確保する

  • 隣地所有者との交渉が必要
  • 相手が売ってくれるとは限らない
  • 高額な買取費用がかかる

セットバック(道路後退)

  • 私道所有者全員の同意が必要
  • 一人でも反対したら実現しない
  • 費用と時間がかかる

位置指定道路の再申請

  • 非常に高いハードル
  • 行政の基準を満たすのが困難

現実的には、接道義務を満たすのは難しいケースがほとんどです。

理由6:リフォームでも制限がある

「再建築はできなくても、リフォームして住めばいいのでは?」

確かに、再建築不可物件でもリフォーム・修繕は可能です。

ただし、建築確認が必要な規模の工事は制限されます。

  • 建物の主要構造部分を変える大規模リフォーム
  • 大幅な増築
  • 用途変更を伴う工事

こうした工事は、建築確認が必要になるため、再建築不可物件では難しいのです。

「リフォームして住めばいい」が通用しないケースもあるのです。


「売れない」わけではないが、売り方が非常に重要

ここまで読んで、「やっぱり売却は無理なのか…」と思われたかもしれません。

ただ、再建築不可物件でも、売却できるケースはあります。

私も、これまで再建築不可物件の売却をお手伝いしてきました。

しかし、正直に申し上げます。

再建築不可物件の売却難易度は、癖あり物件の中でもトップクラスです。

「高く売りたい」という希望は、ほぼ叶いません。

「早く売りたい」と思っても、時間がかかるのが現実です。

重要なのは、以下のポイントです。

  • 買主層を正しく見極めること
  • 現実的な価格設定(かなり安くなる覚悟)
  • 物件の立地や状況に応じた戦略
  • 投資家や買取業者とのネットワーク
  • 隣地所有者へのアプローチ

でも、これが非常に難しい

「誰に売ればいいのか分からない」

「適正価格が全く想像できない」

「隣地の人にどう声をかければいいの?」

「投資家とのコネクションなんて、持っていない」

こうした疑問や不安があるのは当然です。

ここが、専門知識と経験、独自のネットワークが必須なポイントなのです。

一般的な不動産ポータルサイトに掲載しても、反応は薄いでしょう。

高すぎる価格設定では、永遠に売れ残ります。

かといって、相場を知らずに安すぎる価格で売ってしまうのも問題です。

隣地所有者への交渉にも、ノウハウが必要です。

再建築不可物件こそ、経験豊富な不動産会社に相談することが非常に重要なのです。


こんな状況なら、特に注意が必要

以下のような状況に当てはまる方は、さらに売却が難航する可能性が高いです。

  • 建物がかなり老朽化している
  • 急いで売却する必要がある(相続税の納付、管理負担など)
  • すでに複数の不動産会社に断られた
  • 相場価格での売却を期待している
  • 接道がどうなっているか把握していない
  • 隣地所有者との関係が悪い
  • 空き家で管理が大変
  • 固定資産税だけ払い続けている

これらに当てはまる場合は、一刻も早く専門的な知識と経験を持つ不動産会社に相談することをおすすめします。

時間が経てば経つほど、建物は老朽化し、選択肢は狭まっていきます。


まとめ:再建築不可物件は、経験ある会社に相談を

再建築不可物件は、癖あり物件の中でも特に売りづらいです。

住宅ローンがほぼ通らない。

価格が大幅に下がる。

買主が極端に限定される。

大手不動産会社が敬遠する理由も、はっきりとあります。

でも、「売れない」わけではありません。

大切なのは、再建築不可物件を扱い慣れた不動産会社に相談することです。

私も

  • 再建築不可物件の売却をお手伝いしてきました
  • 大手に断られた物件も数多く対応
  • 投資家や買取業者とのネットワーク
  • 隣地交渉のサポート
  • 物件の状況に応じた最適な売却プラン

「売りづらい物件だからこそ、経験と知識、ネットワークのある会社を選んでください。」

これが、私からのメッセージです。

こんな方は、ぜひご相談ください

  • 大手不動産会社に断られた
  • 再建築不可と言われたが、どうすればいいかわからない
  • 相続した実家が接道義務を満たしていない
  • 古い建物で買い手がつかない
  • 空き家の管理に困っている
  • 隣地の人に売却したいが、どう交渉すればいいかわからない

まずは、お気軽にLINEでご相談ください。

次回は【癖あり物件シリーズ③】として、「旧耐震マンション・一戸建て」について詳しく解説します。どうぞお楽しみに。